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グワルティエリ著翻訳

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原 著『日本國使者のローマ到着からリスボン出発に至るまでの物語』

著 者 グィード・グワルティエリ(Guido Gualtieri)

出版責任者 フランチェスコ・ヅァンネッティ(Per Francesco Zannetti)

出版年月日 1586年 ローマ出版検閲の許可を得て。

口語体訳改訂版
『日本國使者のローマ到着からリスボン出発に至るまでの物語』

編 著 一般社団法人 天正遣欧使節顕彰会

譚者   顧問     ピァッテイ・ヨゼフ  (聖ザベリオ宣教会 神父)
理  事            ドメニコ・ヴィタリ (イエズス会 主任司祭)

○尊師カルディナーレ・アッツオリノ台下に、この本を捧げる。

心より尊敬する師に、この本を御捧げ致します。
古の文言に見られる様に、我々のアンティキ(Antichi 先祖、先人)は、知識欲に燃え、困難に屈しない志を持ち続け、すばらしい成果を上げてこられたのは、アンタルティコ・エミスペロ(Antartico Hemispero 南極)のみならず、更にこれを越え、その後方にある我が地球のアルティコ・ポロ(Artico Polo 北極)を目指す探究心にあった。
著名なトラジコ(Tragico 劇作家)セネカ(Seneca ローマ皇帝ネロの教師を務めた人物)の詩で、いみじくも預言している様に、これらの地の果ては、いつの日か発見すべき事であり、既に人々の推察によって断定している事でもある。

セネカの詩

『かくして数百年後に、オセアヌス(海神ポセイドン)に縛られた覇綱を断ち切り
無限の大地に打ち出て行き
ティフィス(Typhisq あなた、ローマ皇帝ネロの事と推察する)の神の新世界を発見
テューレ(Thule スコットランドの街の名)が最北の地の果てでない事を知る時が必ず来るでしょう』

即ち、著名な賢人により、更に多くの世界を発見することは、おそらく暗に、この事を指さしていると思われる。
また、この事を信ずべき言い伝えもある。
それは、かのアレッサンドロ大王が『インドの後方に、なお7ヶ月の間、大洋を航海した先に他の世界がある』と考えていたと。
冷静に考察すれば、偉大なる主イエズスは、御心により新世界の発見を保留して下されたのだと、即ち、これぞ正しく神の栄光を弘め、教会を偉大にする道であります。
すでに約90年の間、これらの地と往路の航海を重ね成果を得ている事は、諸々の書簡や報告によって明らかです。
しかも、我等は未だ、それらのブドウ園の果実を味わう事は無かった。
しかし、数ヶ月前に日本の使者が、ローマ教会の長であり、全キリシタンの父の許に参り拝謁した事は、主イエズスの御慈悲により我等にこの喜びを御許し給わった事であります。
これぞ、かの東方の三賢者来訪(主イエズス誕生の日)の再現が教会に行なわれた事であり、日本國の三大名が主イエズス・キリストを礼拝する為に、王子の中の王子を名代として派遣した事は、三賢者が自らベツレヘム(Bethleen)に赴いた事と同じである。
思うに、これまでローマ・ポンテフィチェ(天と地の橋渡し、ローマ法皇)の御庁に、多くの使者が派遣されてきたが、この驚異の偉業に並ぶものはありません。
かつて、エチオピア(Etiopia)の大候の使者が、シスト4世(Sisto)の許に参り拝謁した事も大いなる偉業であるが、しかし、既に信者であり、ローマ・キリスト教と何等異ならないエチオピアの諸侯と、これまで偶像崇拝信仰である日本國において、初めてキリスト教に入信した日本の諸侯とを比較するに及ばないだろう。
ましてや、エチオピアは、遠方の地とは言い難く、また、我等は、エチオピアの事情を知り尽くしております。
これに対し日本國については、極めて遠方の地にあり、我等は、毛程も知り得ていない未知の國であります。
また、日本國使者の四少年の年齢は、皆15歳程で、いずれも高貴な出自であり、危険や困難を覚悟の上で、全ての欲と安楽を捨て大海原に入り、未だかつてない長旅につき、赤道を超えること二度、帰国の際にも同じ危険を乗り超えたのであります。
日本國使者の来訪を一大驚異事と言わず何と言えば良いでしょう。
貴き信仰と主イエズスの御慈悲をもってすれば何事も成せます。
この様な偉業の名誉は、一重に主イエズスの御威力によるものですが、主イエズスの御名を世界の到る処に弘めたイエズス会(ジェィズイット)の諸大師父の功績も多大であります。
主イエズスの大いなるブドウ園を、彼等は大切に保護し、より広げ、今や、その美しい果実を使徒の御座に献上致しました。
だからこそ、この偉業の成功を編集し、本にて世に伝える事は、決して無益ではありません。
その為に私は、真実の記録を集め、編集致しました。
この偉業を公にする事は、主イエズスの栄光の為、敬虔な魂の救いの為に必然と考え、先ず第一冊目を輝かしい台下に捧げ奉ります。
輝かしい台下と御兄弟の君より今日まで賜った多大なる御恩を衷心より感謝致しております。
御血統及び魂の高貴な方々の大いなる度量と知識、そして御力を、私は心より尊敬致しており、司教及びカルディナーレ様の御位の御威徳に最大の畏敬の念を表します。
また、我が君の期待に、私が負うべき事は甚大ですが、心よりの熱き誠をもって、この本を輝かしい台下に献上するに当たり、台下に私の心の小さなしるしも御納め頂ければ幸いです。
誠に、我が最初の献上品は、近頃、主イエズスの御心に有難くもかない、第一の果実に関わる事も出来、極めて光栄な事で御座います。
また、輝かしい台下が、心より奉る最有力者である偉大なシスト様は、常に、父にも優る慈しみをもって庇護して下さいました。
その御高徳をもって、長く法皇の重き御座に就き、日本國諸侯及びその使者である王子達に一方ならぬ御恵をかけられました。
これらの出来事を、シストの君の栄光の為にも、この本に詳しく述べさせて頂き、輝かしい台下の優れた御見識を敬い、心より御祈念致します。
また、法皇グレゴリオ13世、コルレッジョ・アポストリコ(Collegio Apostolico枢機卿会)、諸侯、諸僧官、ポルトガル•スペイン•イタリアの各国とその全国民、ローマ元老院、並びにローマ市民の歓迎、敬遇、歓待の様子も、ここに明記致しました。
何より私の喜びは、この本を輝かしい台下の御名によって、ローマ宮廷、並びに歴訪した各地に、日本國貴族の信仰の永久の証となる事であります。
四少年が帰国し、その諸侯に復命した暁には、偉大なる主イエズスの栄光の為に、教会の為に寄与する事は多大であり、今後、益々、盛大になる事を少年達に期待しております。
この言葉をもって、恐れ多くも輝かしい台下の御手を吻い奉り、ディヴィナ・マエスタ(神聖なる天の王 Divina Maesta)であるローマ法皇の御健康と御多幸を衷心より御祈り奉ります。

『日本國使者のローマ到着からリスボン出発に至るまでの物語』
1586年7月1日 ベルヴェデレ(Belvedere)にて
心より敬愛する輝かしい台下の僕、グィード・グワルティエリ。

○ジョアンネス・カルガ(Ioannes Carga)の詩
『日本國使者の無事の帰国を祈る見送りの詩』

あぁ、主キリストよ、かつてインドの果てより、神の子である御身に、名代の王子に数々の捧げ物を献上させた諸侯に、帰路の安全の御恵みを御与え下さい。

海と陸と、世界の両極とを、御心のままに創造された神であれば、大海原を乗り超え、安らかに祖国の屋根の下へ御導き下さい。

神の御心を守護するローマに、遠き地より地球を半周し、初めて三國を引き合わせた勇敢なるマンショとその仲間達

未知の国とその民に、ラテンの法をもたらす、この若き使者達を美しき日本の岸へ、信仰篤き豊後の君に御返し下さい

主イエズスに従順である彼等は、貴き十字架の威光により、魔物の恐れを消しさり、神々と仏は、追われ退けられた後に、輝かしい教会を建てるでしょう

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